電人少女 第弐章
『新しいオトウサン』
13】 オヤッサンは,急いでその手紙を読みました。
「…おとうさんへ。ミチコは,このおかねをくれた,しらないおじさんといっしょに,とおくのまちへいきます。そのおじさんは,ミチコを,とおくへつれていくかわりに,このおかねをくれます。どうかこのおかねでびょうきをなおしてくださいね。はやくげんきになってね。おとうさん,いままでそだててくれてほんとうにありがとう。いつまでもげんきでいてね! さようなら。 ミチコより」。
そう手紙に書いてありました……。
それを読んだオヤッサンの目から大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちました。
涙を流しながら,オヤッサンは大声で叫びました。
「ミッチー! 行かないでおくれ!? ワシにはこんな札束なんかよりも,オマエの方がよっぽど大切なんじゃよ!!
ただオマエがワシの傍にいっしょにいてくれるだけで充分幸せだったんじゃ。
…オマエが戻って来てくれるなら,こんなお金なんて一円だっていらないのだよ。
…いや,それどころか,手足の一本や二本,目を一つ…いいや! 全部くれてやってもいいんだ!!!
ああ!かまやしないさっ!!
……そうとも! オマエはワシの,掛け替えの無い,大切な大切な………本当の娘なんだっ!!!
………何もかも…家族さえも! 失ってしまったこの寂しい年寄りに,オマエだけは本当の真心で接してくれた。
皆ワシの元から去って行ってしまったが,そう…ミチコや! オマエだけはずっとそばにいてくれてたのに………
何故じゃ?! なぜ,今頃突然いなくなってしまったんだい?!
いや………。そうか! そうなんだね? …ミチコや! オマエは騙されたんじゃ!!!
…お,おのれ! どこのどいつだか知らんが,人を疑う事も,世の中の事だって,何ひとつも知らない,純心無垢なロボットを,よくも,よくもたぶらかしおったなあっ!!
ええい,この恨みはらさでおくものか!
かくなるうえは,草の根わけてもその悪党とミチコを捜し出し,ミチコを必ず,必ずや取り戻してくれるわっ!!!
…おお! こうしてはおれん?! ミチコ,まっておれ! お父さんが必ず助け出してあげるからね?!」
そう言うとオヤッサンは外へと一目散に駆け出して行ったのでした…。
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