24】ミチコが、皆に逃げるよう叫んだとたん、凄まじい地響きがして、轟音と共に巨神像が崩れ落ちました。
皆大慌てで走り去ったので、なんとか無事に助かりました。
「何ですの!? いったい何が起こったのです?」
さすがのユミさんも、動揺の色を隠せないでいます。
皆があっけにとられていると、どこからか怒鳴り声が響いてきました。
「アヤメーケ! アヤメーケ!! ヒラパ、ヒラパー?! エキス! ポランド!? スポラーンドッ!! フェスゲェーッ!!」
皆が、声のする方に顔をむけると、手に手に武器を持った恐ろしい形相の男たちが、現地の言葉で叫んでいました。
「アヤメーケ! ヒラパ、ヒラパー! ズカ・ベルバラ!? ファミリ、ファミリィ?! ミリーランド、リランド! ハンキュ・エンセェーンッ!!」
それを聞いたミチコが皆に伝えました。
「この人達はこう言ってます…おまえたちは何者だ? ここで何をしているのだ。この、『古代アヤメーケ文明の遺跡』周辺は、つい先程、我々『ヒラパー』の精鋭部隊が占拠したのだ。そして、いにしえの邪教の偶像は、我々の信仰には無用、かつ目障りなので、今からすべて破壊する。きさまらも邪魔だてすれば容赦しないぞ!…と、この人達は言っています」
ユミさんは驚きました。
「ミチコさん、あなた、いつの間にこの国の言葉を覚えたの?!」
ミチコは答えます。
「わたし実は…言葉を覚えるのだけは得意なんです。生まれつき…」
それを聞いて、ユミさんは感心しましたが、すぐにそれどころじゃ無いのに気付き、ミチコに頼みました。
「言葉ができるならハナシが早いわ! お願い、ミチコさん。こう伝えて下さいませ! ワタクシたちは、日本から来たサーカスの団員で、たまたまここに見学に来てただけで、アナタ方には一切ご迷惑お掛けしませんし、すぐにここを立ち去ります、と。 お願いね?」
ミチコは、そのとうりに通訳しました。
ミチコの翻訳した言葉を聞いた、武装集団のリーダー格らしき男が言いました。
「……ヘップ・ナンデカ! オクジョアン、ナンアンネン!! カンラーンシャ、カランシャ!!」
その言葉を聞いたミチコの表情が凍りつきました。
ミチコは思わず、使い慣れている日本語でつぶやきました。
「…そ、そんな?! お願い、そんなヒドい事はやめて下さい!!」
ミチコは、今まで人間と暮らしている間に、いろんな物語に登場するロボット達の話を聞いておりました。
先程の百分の一秒のあいだ、それらを一生懸命思い出していました…。
『…ミサイル…持っていないわ…ジェト推進…わたし、空なんて飛べない…四次元ポケット…ロケットパンチ……』
人間には無理でも、ロボットのわたしにならできる事…それを考え、考え抜き、そしてミチコはある結論を出しました。でも……
「…これをやったら、もう皆とお友達じゃいられなくなるかも…」
ミチコは千分の一秒、悩みました。でも決心したのです。
『…わたしはもし壊れても、誰かが直してくれるかもしれない…でも、人間は死んだら二度と生き返れないわ! …わたしの、最初の『オトウサン』のように… ユミさん! ミチコがユミさんの命をきっと守ってみせますね? …たとえ、今までどうりのお友達でいられなくなっても!!』
そう決心して、ミチコは自分の考えを実行しました…