電人少女 第四章

『エヂソンさんとエジソンさん』

29】あの日から、ユミさんはサーカスを辞めて、ミチコをふたたび目覚めさせる事のできる人を捜して、世界中を訪ね歩いていました。
 そしてついに、通称『エジソンさん』と呼ばれている、天才発明家がいる事をつきとめたのです。
  今、ユミさんは最後の望みをかけて、その『エジソンさん』の研究所の門をくぐろうとしています…。
   玄関まで来て、ユミさんは少しとまどいました。研究所というよりもそこは、小さな遊園地のような感じのする所で、子供たちが大勢で楽しそうに遊んでいたからでした。
しかし、住所はここに間違いありませんでしたし、玄関には『エジソンパーク』と書かれた大きな看板の横に、研究所のあるじの本名が書かれた表札が小さく掛かっています。
だから、ここに間違い無いはずです…。ユミさんは意を決して、呼び鈴を押しました……。

そのころ、ミチコは夢の中に居ました。
 …夢と呼ぶには、あまりにも不思議な、みょうに実感のあるものでしたが……。

 ミチコが夢をみたのはこれが二度目です。
 最初は、エヂソンさんの研究所から運び出されて捨てられて、埋立地の地下で「おやっさん」に掘り出してもらうまでのあいだに、長い夢を見ていました……。
    今度の夢は……機能停止しているせいでしょうか? 体の感覚がまったくないのに、不思議なくらいハッキリとした実感があります。

   ミチコのそばには、飛行服姿の優しそうなおじさんが付き添っています。
二人はどうやら、色とりどりの沢山の風船の付いた、バスタブのような乗り物に乗ってゆっくりと空に昇っているようでした……。


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