電人少女 第四章
『エヂソンさんとエジソンさん』
33】ミチコは今、雲の上にいます。 風船オジサンが言いました。
「オジサン、ちょと用事があるのでそこでそのまま待ってておくれ。外に出ちゃいけないよ。迷子になったらもうどこにも行けなくなってしまうからね?」
ミチコは言われたとおりにしました。
「…ミチコちゃん…ミチコちゃん…」
誰かがミチコを呼んでいます。
「だれ? どなたですか」
ミチコの目の前に、優しそうな女の人が微笑んでいました…
「はじめまして。わたしもミチコと言います…そうねえ、あなたのお姉さんになるのかしら?」
「お姉さん…? でもアナタは人間…」
「同じお父さんの娘ですもの、やっぱり姉妹のようなものね?」
「…あ、思い出しました! ワタシが生まれるずうーっと前に亡くなった、あのミチコお姉さんですか?!」
「大あたりぃー! やっと会えたわね。嬉しいわ!」
「『嬉しいわ!』っていうのも、お姉さんの口癖だったんだ!?」
「あはは、バレたか? うーん、どれどれ、もっとお顔よく見せてね? …うん! これならモデルの私も満足だわ。本物よりずっと美人よ!」
「…そんなあ…お姉さんも綺麗ですよ」
「まあ、本当? アリガトね!」
「…あの、ワタシ…」
「死んじゃったのか、でしょ? 大丈夫、今わたしの仲良しだった人が一生懸命治してくれてるから。もう少し我慢すれば戻れるわよ、きっと!」
「仲良しだった人?」
「あの頃は物凄い照れ屋さんの小さい坊やだったのに、立派になっちゃて! あの子もエジソンさんって呼ばれてるもんだから、お父さんも喜んじゃってたいへんなのよ!」
お姉さんが指差す方を見ると、30半ばくらいのオジサンが一生懸命ミチコの修理をしているのが見えました…
「…嗚呼! 駄目だ!? 僕にはとてもこれほどの技術は無い…それに、今あるモノでは代用がきかないなんて?! あと一歩のところなのに!!」
エジソンさんはとても悩んでいるようです。
その時、インターホンが鳴りました。
「ごめんください!」
エジソンさんは治しかけのミチコにそっとカバーをかけ、応対に出ました。
「はい、どなたですか? 申し訳無いのですが、今手を離せないので、後ほどお越しいただけませんか?」
「それはそれは。実はこちらにミチコがお世話になっているとお聞きいたしましたので、ぜひとも、一目だけでも合わせていただけないかと思いまして…」
エジソンさんは驚きました。ミチコの事は自分とユミさんしか知らないはずなのです。
「あなたはいったいどなたですか? なぜその事をご存知なのです?!」
「それはワタクシからご説明いたしますわ」
「あ、その声はユミさんですね? あなたがご一緒ならば一安心です! 失礼いたしました。どうぞお入りください」
と言ってエジソンさんがドアを開くと、ユミさんと、その後ろにがっちりした体格の立派な身なりの紳士が立っていました…
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