電人少女 第四章

『エヂソンさんとエジソンさん』

39】ユミさんは、サーカスを辞めてからは、地雷を撲滅する活動に取り組みました。
その活動中に出会った某国の王子様と熱烈な大恋愛の末結ばれ、世界中の人々から
『プリンセス・ユミ』と呼ばれ、敬愛されました。
また、晩年には、戦争で不幸になった世界中の子供たちを救う為に活動を開始し、
『マザー・ユミ』と呼ばれて尊敬され、さらにはノーベル平和賞も受賞しました。
ミチコもユミさんの活動にすすんで協力し、生涯パートナーとして活躍しました。
  なお、ユミさんが受賞した年に、エジソンさんもノーベル科学賞を受賞し、授賞式では、久しぶりの再会を喜び、互いの功績を讃えあったということです。

  エジソンさんは、結婚したのは遅かったのですが、ちょうどミチコを修理した年に生まれたという若い奥さんと結婚して、とても幸福に暮らしたそうです……


電人少女 最終章

★…………あれから幾世紀もの歳月が流れてゆきました。ミチコは今でも元気です。 
◆今ミチコは、「世界で最初に誕生した心をもったロボットであり、科学が産んだ芸術品である」という理由から、とある美術館の一角に建てられた「離れ」に暮らしています。 
ミチコに会いたいと思う研究者や科学者、一般の人々はたいへん多くて、朝の開館時間から美術館の本館に出勤して、閉館時間までそういった人達に受け答えをし、夕方、離れに帰ってからは自由時間となっています。 
ミチコは今日もそのような仕事を終え、一人離れで長い長い歳月を回想しています…。 
◆ミチコが誕生した頃にはまだ、この世にはミチコ以外に「心を持ったロボット」は一人もいませんでしたが、この時代には大勢います。そういったロボットの友人も、今では沢山います。 
一見、人間のようなロボットや、その反対にロボットみたいな外見だけれど、中身は人間という人もこの時代には大勢いますから、ミチコは全然自分の存在を特別なモノと考えないで暮らす事ができます。 
◆ミチコは、人間の何千倍も素早くものを考えることができるので、人間にとっての一瞬をとても長い時間に思う事もあり、そして、人間よりもずうーっと長生きなので、人の一生を、流れ星が瞬くほどの切ない一瞬に感じる事もありました。 
今ミチコが生きている時代には、ミチコが誕生した頃に見慣れた生き物で絶滅してしまったものも数多くありましたし、その逆に、昔はいなかった新しい品種の動物や植物も数多くいます。 
◆ミチコは、これまでにほんとうに数多くの人々と出会い、そして別れていきました。この時代までに、人類は多くの困難を…戦争も幾度もありました。その幾つかにはミチコも直接巻き込まれました。飢餓や経済の危機や社会不安、貧困、新種の病気、環境破壊、犯罪の増加、人間同士のいがみあい…ミチコはそれらを見詰めてきました。まるで人間のいとなみを優しく見守る、丘の上の一本の大きな古木のように…。 
◆多くの人々は、その時々の時代の空気に流され、ただ彷徨うだけでしたが、ミチコが出会った人々の中には、それではいけないと立ち向かっていった人も数多くいました。そして、「なんとかしなければ」と真剣に取り組んだ、僅かな人達の努力が、いつしか実を結んだ結果、今も地球に人々が生活することを可能にしているのです。 
◆ある日、美術館の人に連れられて、一人の小さな女の子がミチコを訪ねてきました…


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