[PR]動画

電人少女 第弐章

『新しいオトウサン』

8】 …もちろん,その「可愛い女の子」とは,あの『ミチコ』だったのです。
  オヤッサンは初めはビックリしましたが,あどけないミチコの顔を見ているうちに,今はどこで何をしているかわからない,オヤッサンの娘さんがまだ幼かったころ,そう…オヤッサンがとても幸せだったころの事を思い出しました。
  …この『オヤッサン』は,以前は大きな証券会社に勤めていて,奥さんや子供や35年ローンで建てた,ややちっぽけだけど,とても明るく楽しいマイホームも持っていました。
でも,ある時その会社がつぶれてしまって,急に仕事が無くなってしまい,まじめに職業安定所にも通いましたが,そのころにはオヤッサンはもう五十歳を過ぎていたのでなかなか仕事が見つからず,それでもやっとの事で今の会社に就職できたのですが,奥さんは子供を連れて出て行ってしまい,ローンがあと十年残っていたマイホームも,奥さんに慰謝料を払い,子供の養育費も出さないといけなくなったので,仕方なく手放し,今は四畳半のアパートで一人で暮らしています。
  そういうわけで,オヤッサンは,もう長い間会っていない娘さんの名前を、フッとつぶやいたのです。
  「……みち子……」。
  これはまったくの偶然だったのですが,この『オヤッサン』の娘さんもまた,「みち子」という名前だったのです。
  その時…。長い間地面の下で眠っていたミチコが,自分と同じ名前が聞こえてきたので,「オトウサン」に呼ばれたと思って目を覚ましたのです。
  そして,ミチコは言いました。
「………オトウサン?………」
 
 

次へ

戻る

トップヘ戻る