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電人少女 第弐章

『新しいオトウサン』

9】 オヤッサンは一瞬,ドキ! としました。が,
「ああ,そうか! これは喋る人形さんなのか…」,と思いました。
  「ワシもいい歳をして恥ずかしい…」とは思いましたが,ミチコの顔を見ているともっと話し掛けたくなってきましたから,
「我ながら,バカな事をするもんだ…」と考えつつ,もうしばらくミチコと話を合わせて遊んでから,キリの良いところで仕事の続きをまたやることにしました。
  「…うんうん,お父さんだよ。君はミチコだね?」
   「うん。ワタシ,ミチコよ…こんにちわ,オトウサン! ごきげんいかが?」
  「え? あ,ああ。とても良いよ!」
  「うれしいわ!」 オヤッサンはすっかりミチコに感心してしまいました。
「驚いたなあ! このお人形さんは会話ができるんだ!? どうしてここに,こんな素晴らしいお人形さんが捨ててあったのだろう?」
  オヤッサンはもう仕事どころではありませんでした。現場はそこいらへんの若い者にまかせ,ミチコを掘りかえし,宿舎につれて帰ったのでした…。
 こうして,新しいオトウサンといっしょに暮らす事になったミチコは,飯場の皆からもたいへん可愛がられました。
  ここには,オヤッサンと同じような理由から家族と離れて暮らす人が大勢働いていますし,自分は出稼ぎに来ていて田舎に子供を残している人や,本当はとても心やさしく,子供好きでありながら,ついぞ自分の家庭を持つ事ができなかった寂しがりやのオジサンなども大勢おりましたから,皆それぞれに,ミチコの出現に心なぐさめられているのです。
…こうして,沢山の人間と話をする事により,ミチコはますます『かしこ』になり,今ではもう,すっかり人間とほとんど変わらないほどに,言葉を話したり考えたりできるようになっていたのです …。
 

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