「マリリン・モロー博士の島」の巻


スパーク博士は、
長年の旧友である、マリリン・モロー博士から招待を受け、
モロー博士の研究所のある絶海の孤島へおもむいた。
もちろん、アランとカオリも同行した。

「マリー!久しぶりねぇ。あなたちっとも変わっていないわ!
  まあ。この子がアラン君? こっちはカオリちゃんね?」
「モロー博士、アランです。はじめまして」
  「カオリです。どうぞよろしく!」
「アラン君の活躍はいつもニュースで拝見しておりますわ。
まだ子供なのにあなたはとっても勇敢なのね?」
「……それほどでもないです」
「お兄ちゃん、何真っ赤に、なってんのよ?」
「マリリン、久しぶりに会えて本当に嬉しいわ。
ところで、わざわざ私たちを招待してくれたのには
何か理由があるのでしょ? それは何なの」
「私の研究テーマをご存じかしら?」
「ええ。確か、超長距離宇宙旅行に関する研究だったわね?」
「そう。そして、その超長距離宇宙旅行の際の、
乗組員の居住スペースの対策もわたくしの重要な研究テーマですの。
それに関して、このたび画期的な方法を考案いたしましたのよ。
だからあなた方にもぜひ見ていただきたく思ってご招待させていただきましたの」
「画期的な対策方法?」
「そう。今まで誰も考えつかなかった、画期的でスマートでクールな、
もうこれっきゃ無い!っていうくらいの
『たった一つの冴えたやり方』なのですわん♪」
そう言いながら、マリリン・モロー博士は壁のスイッチを押した……。



★モロー博士がスイッチを押すと、それまで白い壁があったところが透明なガラスに変わった。
◆「あ!こ、これは?!」
ガラスの向こうには、信じられない光景が広がっていた…。
◆人の背丈ほどの、2本足で立って歩く、人間とも動物ともつかない生き物が大勢そこにいたのであった。
◆「マリリン、これはいったい?! どういうことか説明してくれないかしら?」
  「おほほほほ!これこそが私の研究の成果なのですわ」

   ☆「わたくしは、人類が長期間宇宙旅行するために必要な宇宙船の大きさを計算してみましたの。
するとどうでしょう?人々が暮らすために必要な大きさの宇宙船はあまりにも巨大すぎたのです」
◇「そこで私は、人間の方をなんとかしなければと考えました。
しかし、人間をそのまま小さくする方法などはあるでしょうか…?
 それがあったのです!
  つまり、乗組員のDNAを再生可能な状態で小さなカプセルに保存し、
目的の星で、そこの生物の体を利用して、また再生させることにすれば、無駄な大きさの居住スペースを作る必要もなく、
また、DNAをカプセルの中で冷凍保存しておけば、どんなに遠いところでも、
たとえその旅が何千年も何万年もかかろうとも、
無事に目的地に到着し、活動する事ができるようになるのですわん☆
  ああ!なんて素晴らしいアイデアなのかしら! 自分でもシビレちゃいそう…」
◆「そ、その為にアナタ、動物に人間のDNAを注入してキメラを造ったのね?!
  ああ、なんて事かしら! 科学者の倫理にそむく恐ろしい研究だわ!
  生命の尊厳に対する冒涜よ!? お願い、今すぐこの研究を止めてちょうだい!
  でないと、今に恐ろしい事がきっとおこるわ!?」
  「マリー、あなたなら理解してくださると思っていましたのに…がっかりですわ………。
この技術を発展させれば、
人類は永遠に絶滅する事なく、何億年でも時間をかけて、
宇宙の隅々にまで縄張りを広げていけるというのに…。
カプセルさえ頑丈につくれば、
太陽系のはずれとかで水爆を爆発させて、
その勢いであらゆる方向にヒトDNAカプセルをばらまいて、
時間も長期の宇宙旅行による精神的、肉体的なストレスも気にせず、
とっても安上がりに銀河系に人類の足跡を残せる画期的な方法なのですわよ?」

  「マリリン! あなたが言ってる事は…
地球人を宇宙の侵略者、インベーダーにしてしまおうという事なのよ!?
  どうしてそれがわからないの!
  人間に乗り移られたその星の生き物…それはそこの星の人類かもしれない…
その人達の文化や身体的特徴を侵略して壊してしまうのよ!」

  「その星の生物の身体的特徴とヒトの特徴を混ぜ合わせていた方が、
余計な生命維持装置の付いた宇宙服なんか着なくてもそこで暮らせますのよ?
  完全に体を乗っ取るのではなく、ヒトとその星の生物と半分こする感じなのに。 どうしてそれが、
アナタにそこまできつく言われなければならないほど、いけない事なのかしら?」

  「地球人と混ざり合った体では、もうその生物は"その生物"ではなくなるからよ!
  目を覚まして! お願い、マリリン!?」

◆二人の女性天才科学者が激しい議論を繰り広げているその時、
キメラたちの飼育されているオリの鍵を
中からこじ開けようとする者がいる事に誰一人気づいていなかった。
アランすらも、今まで見た事なかったスパーク博士の激しい剣幕におろおろしていたのである…


★博士たちの激論はまだ続いていた。
  ◆「マリー、これは進化の上で必然なのですわ!
  水の中から陸上に、陸上から大空へと生息域を広げていき、
今、新たに宇宙へ広がろうとしているこの時代、
そう、アナタのご主人がやっている火星のテラホーミングだって、
人類と地球の生命が宇宙へ進出する為の行ないではありませんの?」

  ◇「ジョニーがしている事とはまったく話が別よ!
  あそこにはまだ生命は発見されていないわ。
もし、火星人でもいれば…いいえ、たとえ微生物であっても、ただちに中止するはずよ。
そして、共存をはかると思うわ。
手当たり次第に侵略していくようなあなたのやり方と一緒にしないで!」

  ◆「…人類が新たな開拓地に手を伸ばして、そこに先住民がいた場合、
ただの一度でもその人たちの文化を破壊しなかった事がありましたかしら? キレイ事ですわ!」

  ◇「だからって、はじめから破壊する事がわかっていながら、
それを行なうというのは、取り返しのつかないあやまちを犯す事になるわ!
  あなたは地球人の都合の良いようにしか考えていない!」

  ◆「地球人であるワタクシが
地球人の都合の良いように考える事のどこがいけませんこと?
  …マリー、こう考えてごらんあそばせ。
地球人もいずれ絶滅が心配される貴重な種であると…。
アナタ、このまま地球上だけでいつまで人類が生き残れるとお考えかしら?
  …ワタクシは、かなり生き残れる確立は少ないと思いますわ。
あと何百年か、何千年か…
アナタのご主人が行なったテラホーミングによって、
火星にヒトやその他の地球生命が暮らせるような環境になったとしても
…はたしてその頃地球はどうなっているのかしら?」

  ◇「そうならない為に私たちが努力しているんじゃない!
  テラホーミングだって、千年、二千年という長い期間の計画だからこそ、
そのあいだ、地球も大切にしていかざるをえないから、
未来に希望…後に続く世代に希望を託すためにようやくスタートさせた事よ!」

  ◆「計画の意義は認めますわ。でも、現実は?
  果たして最後までできますかしら?
  ワタクシ、あなた達のように夢想家ではございませんことよ。
現実的に、人類とその他の地球生命の種の保存を考えてこの研究をしておりますの。
生命が生き残る為には『弱肉強食』が鉄則なのですわ!」

◇「…なんてことを! いいえ!生命は決して弱肉強食なんかじゃないわ!
  大自然が何億年もかけてつくり上げた循環のサイクルの中で『分かち合っている』ものなのよ。
食物連鎖のピラミッドの頂点にいる"ターミナル・アニマル"でさえ、
命を終えれば、その循環の輪の中に取り込まれていくものなのよ。
それに、『進化』に"意思や目的"は関係無いわ。
無数の偶然が重なって、私たちや他の生き物は今の形になって生きているの。
人為的に操作した進化など、必ずボロが出るものよ。
…今まで、人間が人為的に環境を変えようとしてどれほど大失敗を繰り返してきたことか…」

  ◆「ワタクシは、地球上でこの方法を行なおうとはしておりませんのよ。
宇宙のどこか知らない星で、何万年も先に結果が出るのですわ。
…繰り返し申しますけれども、『人類は貴重な種』なのです!

  生命が地球に誕生してから38億年あまり。
そのうち33億年ほどは『先カンブリア紀』という、
微生物やクラゲのような原始的な生命しか存在しなかった時代でした。
5億年前の『カンブリア紀』になって、
ようやく我々の祖先にあたる"ピカイア"という原始的な魚の祖先が誕生し、
つい4、500万年前にチンパンジーと共通する生き物から人類がスタートし、
その短期間で奇跡的な進化を遂げ、今や宇宙に第一歩をしめすほどになったのですわ☆
  カンガルーの仲間の有袋類は、我々より先に、1億年近い大昔に地球上に現れ新化してまいりましたけれども、
立ち上がって両手が自由に使えるようになっても、カンガルーとコアラくらいにしかなれませんでしたのよ!
  知能が高いといわれる象やクジラやイルカでも、科学する文明は持たなかった…
地球上で科学力を持つ唯一の生命体、それが人類なのですわ!」

◇「象やクジラが科学力を持たないのは、それを持たなくても環境に十分適応できたからよ!
  人類には犬ほどの鼻や耳も、超音波で障害物を探知する能力も、
タカやワシほどの視力も生まれつき持ち合わせていなかった。
だから道具を使ったり火を使うようになって、やがて科学も誕生したのよ!
  …あなたの考えは危険すぎるわ。
まるで…まるでヒットラーみたい!」

◆「んまあ!? ヒットラーですって!
  あ、あんなチョビ髭のオヤジと一緒にしないでくださる?!」

◇「ああ〜ら♪ チョビ髭つけたらきっとお似合いかもよ☆」

◆「まあ、悔しい! なによなによ!
  昔からいつもいつも自分だけイイコになっちゃって!
  すぐワタクシの事からかって!」

◇「アナタ大学に入った頃って、まだ10歳で、その頃まだオネショしてたっけ?
  あたしルームメイトだったからよく泣きべそかいてるアナタの後始末こっそりしてあげてたのよねえ〜♪」

◆「ああああ?! こっそりじゃ無ぁ〜い〜っ! 今バラしたあ〜っ!?」

◇「…あ〜んな寝ションベンたれが、今や宇宙制服を企むようになるなんてねえ…」

  ◆「寝ションベンたれとか言うなあ〜っ!? …エ〜ン! もうお嫁に行けなあ〜い!?」

◇「ああら、あーら♪ ごめんあそばせ〜♪ ア〜ナタ、まだだったわねぇ〜っ! 結婚?
  …アランもカオリもいらっしゃ〜い♪ はいはい、抱っこしたげるね? ぎゅう〜ぅ☆
  嗚呼! 母の喜び感じるわあ☆ 良いなあ! 家族って☆
  ほほほ! 主婦の喜び☆ 余裕のヨッちゃン、巨乳のミッちゃんよ!
お〜ほほほほ☆」

  ◆「ミッちゃんて誰よ?!」

  ★なぜか話が、突然低次元な暴露大会になった頃、密かに忍び寄る怪しい影が…待て次回!


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