「ママのバカあっ! イジワル!」
「あ、カオリちゃん、どこへ行くの? もうすぐ晩ご飯で、
ママのご自慢の、チクワのいっぱい入ったオデンときんぴらゴボウが…」
「…いつもそればっかりで、もう飽きたわよ!」
バタン! とドアを閉めて、カオリは外へ飛び出してしまった…
カオリは子犬を抱いて賑やかな通りを一人トボトボと歩いていた。
「…ぺス、可愛そうにね? 誰か親切な飼い主をきっとみつけてあげるからね。これだけたくさん人が歩いているんだもん! きっと良い人がみつかるはずよ…」
だが、なかなかもらってくれる人は現れなかった。
レストランや居酒屋からは陽気な笑い声と、様々なゴチソウの良いニオイがただよって来る。
「関東炊きダイコンとジャガイモ!」
「鶏モモ塩焼き♪」
「焼き秋刀魚塩焼き!」
「ハマチあら煮☆」
「どて焼き一丁!」
お! 秋刀魚が来た来た♪ 先生! お願いします☆ おお、まかせなさい!
秋刀魚解体ショー! はじまりはじまりぃ〜☆
チャララ ララ ラァ〜ン☆
おお! 居酒屋のネコのピーちゃんだあ♪
ピーちゃん久しぶりぃ☆
「二ャア?」
締めは湯豆腐ね……あ、アサリの酒蒸し忘れてた…すんません! アサリ酒蒸しも……☆
カオリもぺスもお腹がグゥ〜♪ と鳴りだした…。
「いいわよ! もうこうなったら飼ってくれる人が見つかるまでお家には帰らないから!
ぺス、ごめんね? オナカすいたでしょ…あーあ…腹が減ってはイクサはできぬ、かぁ……」
「オジョウサァ〜ン、チョット良イデエースカア〜?」
いつの間にか、カオリの目の前に一人の老紳士が立っていたのだった……