「…じゃあ、投げるね?…ほれ、すぱあ〜くぅ〜ぶぅめらぁ〜ん…」
ヒョロヒョロヒョロ〜☆
「ワオーン!」パク☆
目の前に飛んで来た、へろへろなスパークブーメランを、
ペスはジャンプして空中でキャッチし、大喜びで走り去ってしまった。
「ああん! 返してよぅっ?! それ僕んだよぉ〜!」
アランは半べそかきながら、それを走って追いかける。
カオリは言った。
「…お兄ちゃん……本当に…情け無い!?」
「ホホホ! ペス君ハ、ヤッパリ凄ォーイデース!
ソノ調子デ、世界ノ王者ニナルノデース☆」
嗚呼!? このまま人類は魔犬の足元にひれ伏すより術は無いのであろうか?!
アランはなんとか持ち前の健脚でペスに追いついた。
「ほーれ、ペス。良いコだね〜♪ さ、僕にソレ返してくれるよね? …ね?」
あまり得意でない口笛を、ピー♪スー♪ピー♪スー♪ と吹きながら、
アランはペスに向かってお手々をパチパチ叩きながら近づいて行く。
スパークブーメランをくわえながら、ペスはキョトンとした表情でアランの方を見ていたが、
やがて嬉しそうに尻尾をブンブン振りながらアランに向かって駆け出した。
そして、アランの肩に前足をドスン! と置き、ベロベロベチャベチャピチャピチャピチャ♪
と、アランの顔中をその馬鹿でかい舌で舐めまわした。
「うぷ! …やめ…やめて?! 嫌! 気持ち悪い〜!
く…口の中はやめて!? …い…息が…で…できない?!
うぷ!? うぐ……!」
アランはたまらずその場に押し倒され、
悪い事に、犬からすれば《服従のポーズ》に見える、仰向けの状態でひっくりかえってしまった。
ペスはますます、この新しい「お友達」にジャレまくり、
アランの頭の天辺から足の先まで、全身くまなく大サービス!
といった感じで、ペロペロペロペロペロペロペロリ♪
と舐め回したのであった。
大パニックに陥ったアランが、嫌がってジタバタすればするほど
ペスの方はよけいに、楽しく遊んでもらっているのだと勘違いしてしまい、
もっともっとキレイにしてあげようと、より一層丁寧に舐め回した。
そしてとうとうアランは、ばかでかい犬にあちこち舐め回されているうちに、
スパークスーツがペロン☆と脱げてしまい、まる裸にされてしまった!?
「うわあ〜っ?! や…やめろ〜っ!? あっ! 駄目!?
うわあ〜ん! …舐めちゃ……嫌だあ〜っ!! やめてぇ〜っ!!」
「クゥーン…? ……ワン!ワン♪」
ベッロォ〜ン☆ ベロリィ〜ン♪
あ………?! うわああああああああああああああ〜っ………?!
全身、ペスのヨダレでずぶ濡れになったアラン。
あまりの大ショックにその場にペタンと座り込み、
えっく、えっく…、と泣きべそをかいていたが、
とうとう、大声で泣き出してしまった。
「うえ〜ん! え〜ん! ええ〜ん!
…ばかあーっ! この…バカ犬! な…なにすんだよう?!
気持ち悪いよお〜! 犬臭いよぉ〜っ?! ヨダレ臭いよぉ〜っ!
………もう、家帰ってお風呂入る!!
馬鹿馬鹿しくって、こんな事もうこれ以上やってられますか!? つーの!
もう知るもんか! 僕、帰る! 帰るったら帰る!」
おいおい、アラン、本当に帰っちゃうの?(つづく)