惑星少年アラン「SOS!火星基地」の巻 2002/09/15 18:05:40

 
★二十一世紀後半、人類はついに宇宙開拓時代をむかえた。
が、宇宙に進出した人類には未知の危険もまた多かった…
  ◆「隊長、ちょっとこれを見てください」
  「どうしたんだ? 何か変わった事でも…?」
  「未確認飛行物体です。真直ぐこちらに接近しています!」
  「…未確認、とは言えないなあ、こうハッキリとあらゆる観測装置で確認できたんじゃ…」
  「どこの国の宇宙船でしょう? あんな変わった形の船はまだ見た事がありません」
  「私もだ。新式が発表されたなら、宇宙開拓協会に登録されるから 私が知らないはずが無いのだが…これはもしかすると、アレかもしれないな?」
  「アレでしょうか? アレというとつまり、例のアレの事?」
  「そう。例の"アレ"さ」
  ◆その時、基地の通信装置から、機械的な冷たい声が聞こえてきた。
  ◆「地球人に告ぐ。我々は『ブリトニー星人』である。
  地球人よ、ただちにこの惑星から立ち去れ!
  さもなくば実力をもって諸君を排除する! 繰り返す。地球人に告ぐ…」
  ◆「嫌な予感というものは、往々にして的中するものだね?
  やはり地球外知的生命体の乗り物だった…」
  「どうします、スパーク隊長?」
「もちろん、みすみすここを手放すつもりは無い。
できるかぎり我々の力で守ってみせようじゃないか。
だが、地球にも報告をしないといけないな…」
  ◆「…テン・スリー・フォー、テン・スリー・フォー、テン・スリー・フォー。
  火星テラホーミング前線基地より国際宇宙管制センターへ。
  …私は火星テラホーミング計画主任、
『ジョン・グレン・ミラー・スパーク』隊長。
  …現在、基地に向かってアンノーン接近中。
万が一、交戦状態に入れば、できるかぎりこちらも応戦する。
…だが、地球でも十分警戒されたし。
…報告は以上。本件終了!
  …さあて、そろそろおでましかな?」

   ◆「アラン! パパが危ないの!? すぐ行って、お願い!」
  「はい!」
「あ、まって、これも持って行ってちょうだい」
  「なんなの?この厳重に梱包した荷物…?」
「基地に着いたらパパに渡して。そうすればわかるわ」
  「うん、そうするよ。じゃあママ、行って来ます!」
「あなたも気をつけるのよ?」
「わかってますって☆」
  さあ、急げアラン! 家庭と地球、両方の平和が君にかかっているのだから。



★火星基地は今まさにブリトニー星人からの攻撃を受け、
絶体絶命の危機におちいろうとしていた!
  「みんな!最後まであきらめるな!」
  「もちろんです、スパーク隊長!」
  ◆アランは遊星号を限界スピードにまで加速し、火星基地を目指す。
「お兄ちゃん、テラホーミングってなあに?」
  「わ!?カオリちゃん、ついてきちゃダメだってば!
特に、今度の事件は命がけ………ううん、もう!
しょうがない妹だな…安全ベルトしっかり結んでおきなよ!」
◆「…テラホーミングっていうのはね、他の天体を地球のような環境に改造する技術なんだ」
  「すごーい! じゃあ、もうすぐワタシたちも火星に暮らしたりできるようになるのね?」
  「そうでもないんだよ。
お父さんが出発する前に詳しく話してくれたんだけど、
早くても1000年か2000年くらいかかるんだって…」
  「なによそれ?! 意味無いじゃん!」
  「カオリは本当にそう思うかい?」
「うん」
「じゃあ、なんでお父さんはそんな仕事のために、
僕たち家族と離れて、こんなに遠い火星なんかで何年も働いているんだろう?」
「さあ?」
   ◆「お父さんに以前こんな話を聞いたんだ。
…アルタミラの洞窟って知ってるかい?」
「原始人の絵が描いてあるほら穴でしょ?」
「そうだよ。じゃあ、万里の長城は?」
「中国の物凄く長い…宇宙船の窓から見える唯一の人間が作った建造物で、一種のバリケードだったのよね?」
  「そう。…アルタミラの一番古い絵は何万年も前に描かれたもので、
一番最後に描かれた絵は一万数千年前のものなんだって。
最初の絵から最後の絵が描かれるまで1万年以上の年月、
原始人たちは、あの同じ洞窟に来て、
狩の神様にお祈りするために、ケモノの絵を描き続けたんだ。
…万里の長城も、完成するまでに気の遠くなるような歳月をかけられてる。
…人間はね、すでにそういう、
気の遠くなるような年月をかけて、一つの事をやりつづけた事があったんだ。
少なくとも、遠いご先祖様たちはね……」
  「……なんだか目まいがしてきちゃうわ!」
  「あと、スペインのサグラダファミリアっていう教会なんかも…おっと、そろそろ火星基地に着くぞ!
  お父さん、まっててください!」


★突如襲来したブリトニー星人の宇宙船は、
今まさにアラン少年の父、スパーク隊長に光線砲の照準を合わせていた。
  ◆ビビビビビビ!
  稲妻のように激しくのたうちながらも、怪光線は正確にスパーク隊長に迫り来る!?
  ◆「スパークブーメラン!」 バチバチバチバチ!
  間一髪! ようやく駆けつけたアラン少年が放ったブーメランは
火星の希薄な大気の中でも力強く高速回転しながら、
一種の電磁バリアーとしてブリトニー星人の攻撃を防いだ!
  ◆「おお!? アラン! …それにカオリまで?!
  二人とも、こんなところへ来て危ないじゃないか!」
  「お父さんごめんなさい。お父さんの事がみんな心配で…」
  「とにかく、カオリは基地の中へ入っていなさい。
…アラン、危険なことに巻き込んでしまってすまない
…だが、今はそれよりも、何としてでも生き残る方が先決だ。
悪いが、手伝ってくれるかい?」
  「もちろん喜んで!お父さん…」
  ◆ブリトニー星人が言った。
「…お前はいったい何者だ? …地球の少年…ではないな?」
   「僕はアランだ! 地球を愛する…男の子だい!
  僕が来たからにはもう好きにはさせないぞ!
  今すぐこの太陽系から立ち去れ!」
  「何を生意気な!
  …どうやらこの宇宙の裏切り者を片付けてから、
我々の計画をを実行しなければならなくなったようだな…
小僧、覚悟しろ!」
  「負けるもんか!」
戦え! アラン!! 君だけが頼りなのだ…


★「スパークブーメラン!」
  アランはブリトニー星人の宇宙船に対し、
一歩もひるむ事無く敢然と挑む。
  しかし、敵は外宇宙の未知の文明人である。
勇気だけで勝てる相手では無い…
  ◆「小僧、もう降参か? 口ほどにも無い奴だな」
  「黙れ! まだ負けないぞ。負けるもんか!」
  「減らず口もそれまでだ。消えろ! 宇宙の裏切り者!」
  ブリトニー星人が、精魂尽きたアランめがけて殺人光線を発射した!
  ◆その時であった。
アランの腰のバックルがまばゆく輝き、アランの全身をその光で包み込んだ。
ブリトニー星人の光線はその光に跳ね返されて、彼等の宇宙船を直撃したのである!
  ◆「…あ、あれは?! まさか…いや、間違いない!
  ……もしやと思ったが、やはりそうだったのか!?
  おい、アランとか言ったな?
  オマエの星にはカッコウという鳥がいるだろう。我々はその…」

  ブリトニー星人がそこまで言った時であった。
突然、激しい閃光とともに、ブリトニー星人の宇宙船は爆発し、
火星の空に消えた。

◆「ようやく間に合った。皆さん、大丈夫ですか?」
火星基地の救助に駆けつけた宇宙パトロール隊が放ったニュートリノレーザー砲が、宇宙の侵略者にとどめをさしたのであった…



★火星基地は復興作業で大忙しであったが、そこには久々の親子水いらずの風景もあった。
◆「これ、ママからパパに渡してちょうだいって預かってきたのよ」
「ほう。なんだろうな? 随分厳重に梱包してあるようだが…」
◆「おお! これは?!」
  「パパ、何が入ってたの?」
  「…う、うっ、父さん嬉しくて涙が出そうだよ!」
  「くんくん…わあ! 美味しそうなにおい♪」

  ◆真空滅菌ケースに入った大事な荷物。その中身は…?

  ◆「イタダキマ〜ス♪」
  スパーク隊長の粋なはからいで、
その夜基地の隊員達にも、マリー・スパーク博士ご自慢の、
チクワのいっぱい入ったおでんとキンピラごぼうが振舞われたのであった。(惑星少年アラン「SOS!火星基地の巻」おわり)


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